巨匠の様々なエピソードを秘めたARNE JACOBSEN TABLE CLOCK(アルネ・ヤコブセン テーブルクロック)
北欧が生んだ巨匠、アルネ・ヤコブセン。
生涯に数多くの建築とプロダクトを残したヤコブセンですが、そのプロダクトデザイナーとしての出発点は1つのテーブルクロックでした。
1930年代、大規模リゾートのプロジェクトを成功させ、建築家として名を成しつつあったヤコブセンに、デンマークの電気メーカー大手Lauritz Knudsen(ラウリッツ・クヌーセン)社がテーブルクロックのデザインを依頼したのです。
このクロックは、それまで建築をメインに活動してきたヤコブセンの転機となり、後に数々の素晴らしいプロダクトデザインを生む第一歩となりました。
しかし、このクロックが発売されてほどなく世界は大戦に突入。
ヤコブセンも一時、スウェーデンへの亡命を余儀なくされるなど混迷を極める中、クロックは短期間で発売中止となってしまいます。
そのため、長い間、「幻のテーブルクロック」と呼ばれてきました。
その時計をデンマークの代表的プロダクトカンパニーであるROSENDAHL(ローゼンダール)社が復刻。
オリジナルの文字盤と、ヤコブセンのデザインによるウォールクロックの文字盤を採用したものを合わせて6種類が発売されています。
こちらが、ヤコブセン初のプロダクトデザインを復刻した「LK」。
やや斜体のかかった柔らかい印象の数字。
中が打ち抜かれた幅広の長針短針も優雅さを感じさせます。
「LK」と共に開発された「ROMAN」。
エレガントなローマ数字があしらわれています。
この時計は、後にオーフス市庁舎を設計したさいに造られたウォールクロックの元型となったデザイン。
ちなみにオーフス市庁舎と時計についてはちょっとした因縁が……。
これが1942年に竣工したオーフス市庁舎ですが、時計塔が不思議な形をしていると思いませんか。
じつは元の設計案には時計塔がなかったんです。
これに地元の市民は猛反発。当時の役所というのは時計塔がつきものだったんですね。
ヤコブセンは「民主主義的な建築を」という依頼に、市民を睥睨するような塔を建てない、フラットな建築を提案して採用されたんです。
しかし、あまりにも評判が悪く、コンペのやり直しまで取り沙汰されるにいたり、仕方なく時計塔を付け足すことに……。
この不思議な形の時計塔は、ヤコブセンのせめてもの抵抗だったのかも。
この後、ナチスによって民主主義がふみにじられ、ユダヤ系だったヤコブセンが亡命せざるをえなかったことを考えると感慨深いですね。
市庁舎といえば、この「CITY HALL」も関係があります。
この文字盤は、もともと1956年竣工のルードブレ市庁舎のウォールクロックとしてデザインされたもの。
これがルードブレ市庁舎。
時計塔がないフラットなデザイン。時計は塔ではなく壁面に付けられています。
戦後になると、民主的な庁舎建築が一般的になったことが分かります。
庁舎以外にもヤコブセンは多くの公共建築を残していますが、遺作となったのが1971年竣工のデンマーク国立銀行。
セキュリティ上の配慮もあり、要塞のような無骨な印象の外観になっています。
中がまたすごいんです。
6層吹き抜けの大ホール! 壁に穿たれたスリットから外光が差し込む様はまるで教会の大聖堂のよう。
大空間に置かれたスワンチェアが小鳥のように見えますね^^
このデンマーク国立銀行のためにデザインされたウォールクロック、「BANKERS」の文字盤を使用したのがこちら。
インデックスで数字を表したモダンなスタイルは、ヤコブセンの代表作ともなっています。
ヤコブセンはデンマーク国立銀行の完成直前、1971年3月に亡くなっています。
BANKERSは、まさにヤコブセンのプロダクトの集大成といえるかも知れませんね。
今もデンマーク国立銀行のいたるところにBANKERSがかけられているそうですよ。
こちらの「STATION」は1943年、「LK」、「ROMAN」に次いで発売されたもの。
「LK」の数字が当時一般的だった手書き風なのに対し、こちらはバウハウス風のカチッとした書体。
視認性の良いデザインをラウリッツ・クヌーセン社は高く評価し、デンマークの鉄道駅で使われるクロックにも採用されることに。
デンマーク全土にヤコブセンのデザインを知らしめた記念すべきプロダクトとなりました。
STATIONのカラーバリエーションが「BURGANDY」。
実際に発売されたクロックはホワイトとブラックでしたが、当初からバーガンディも企画されていました。
しかし、実現に至らなかったこの「BURGANDY」は、まさに幻の中の幻のクロックなんです。
〈後ろから見ても横から見てもカッコいい!〉
さて、このクロックの特筆すべきところがもう1つ。
それは後ろから見ても、横から見てもカッコいい!ということ。
普通、クロックの裏って、調節用のツマミや、電池の蓋があったりしてなんかウジャウジャしてカッコ悪いじゃないですか。
でも例えば、部屋の中央に向けて配置したデスクに、自分に向けてクロックを置くと、部屋に入って来た人には裏側が見られてるわけですよね。
このクロックはツマミや電池の蓋を、全て大きなカバーの下に隠したスッキリデザイン。
どこから見てもカッコいい。だから、どこにでも置けるんです。
どのデザインもサイズは110mm×60mm×120mm。価格は12,960円(税込)になっています。
〈父の日にプレゼントしたいウォッチも!〉
ローゼンタール社ではテーブルクロックの他に、ウォールクロックやウォッチも復刻しています。
写真のBANKERS、文字盤直径46mmのモデルが52,920円(税込)。
なかなかいいお値段ですが、父の日ギフトにどうでしょうか。
ここで紹介したヤコブセン建築と時計に関するエピソードみたいなうんちくって男心をくすぐるものなんですよ。
ウォッチにうんちくを添えてプレゼントしてみては!?
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