故・長大作さんと Lisa Larson(リサ・ラーソン)がコラボ 天童木工のマイキーチェア
去る5月1日、日本を代表するデザイナーであり建築家の長大作さんが亡くなりました。
長さんと言えば、柳宗理、渡辺力、剣持勇、水之江忠臣などと共に、日本のミッドセンチュリー・デザインを牽引された方。
最晩年まで、新たなデザインを生み出し続けた重鎮でした。
その代表作が1958年にデザインし、1960年から天童木工で販売されているロングセラー「低座イス」。
座面までの高さが29cmと低く、足を投げ出してリラックスできます。
また座面が広いのでゆったり胡座をかくことも可能。
和室での生活を考慮し、畳を傷つけないために加重を分散させるソリのような形。
背のデザインは柿を切ったときの断面を模したと言われています。
日本人の暮らしを見つめることで誕生したイスです。
日本を代表するプロダクトにマイキーが!
この、とても日本的な美しさを持つイスと、Lisa Larson(リサ・ラーソン)がコラボしてたんですね!
「マイキーチェアby天童木工」。81,000円(税込)。受注生産。
あのマイキーが低座イスの上を歩き回っています!
これは以前、紹介したマイキーの箸置きや、「おさけとり」と同じLISA LARSON Japan シリーズの1つ。
日本を代表するプロダクトをコラボ相手に選んだことに、リサのジャパニーズモダンデザインへのリスペクトが感じられます。
リサのキャラクターと出会うことで低座イスの全く新しい表情が見えてきました。
これまでも和洋を問わずマッチすると言われていた低座イスですが、いろいろなシチュエーションに合わせてみたくなりますね。
SOU・SOU、Amazonとのトリプルコラボも
低座イスは他にも京都のブランド、SOU・SOUと、Amazonとのトリプルコラボもしています。
SOU・SOUは和を基調としたオリジナルのテキスタイルで、和装や手ぬぐい、風呂敷などを展開する京都のブランド。
低座イスとのコラボでは5種類の帆布を使用。
これらは全てAmazonでの限定発売で各73,440円(税込)になっています。
八代目松本幸四郎邸のためにデザイン
さて、この低座イスがデザインされたのは八代目松本幸四郎邸のためでした。
八代目というのは今の幸四郎さんのお父さん、つまり松たか子さんのお祖父さんになりますね。
松本邸の設計をしたのはル・コルビュジエの弟子として知られる坂倉準三の事務所。
当時、坂倉事務所にいた長さんが担当しました。
松本家の生活は、常に和服をきちっと来て座るときは正座というもの。
でも、おばあさんが「テレビを見るときくらい、ゆっくり座りたい……」と漏らしたんだそうです。
そこで考えられたのが低座イス。
八代目はこのイスをたいそう気に入り、公演中も楽屋に持ち込んで常に使っていたそうです。
低座イスの元になったのは、坂倉準三が戦後間もなくデザインした竹かご低座イスでした。
これが竹かご低座イス。
昔、和室でイスを使う時には、畳を傷つけないように、脚に「畳ずれ」という板のようなものを取り付けるのが一般的でした。
この、畳ずれが、イス本来のデザインを損なうことを嫌った坂倉は、イスと畳ずれが一体化したような、ソリに似た脚を考えたんです。
師である坂倉の竹かご低座イスをリ・デザインして生まれたのが長大作さんの低座イス。
さらに言うと坂倉も、フランス人シャルロット・ペリアンが1941年の来日時に日本的空間のためにデザインした低座イスをリ・デザインしています。
フランス人のデザインを日本人がリ・デザインし、今、リサ・ラーソンが北欧のセンスを注入したのがマイキーチェアということになるわけです。
世界中の人たちが英知を結集させたグッドデザインを我が家に迎え入れられたら素敵ですね!
●長大作/ちょう だいさく(1921ー2014)
満州生まれ。東京美術学校(現・東京芸術大学)卒。
1947年、坂倉準三建築研究所に入所。
藤山愛一郎邸や八代目松本幸四郎邸などの設計を手掛ける。
1972年に長大作建築設計室を設立。
家具デザインを中心に活躍。
低座イスやパーシモンチェアなどの名作を残す。
5月1日、老衰のため死亡。享年92。
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