Jens H Quistgaard(イェンス・H・クイストゴー)の和テイスト漂うヴィンテージ食器
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食器
北欧デザインにはどこか日本的な雰囲気を感じさせるものが沢山あります。
それは日本人と北欧の人たちの感性に共通する部分があるからであり、
また日本と北欧のデザイナーが影響を与え合った結果でもあります。
1950年代には民藝運動の柳宗悦や濱田庄司がスウェーデンに渡りグスタフスベリ社を訪れ、
反対にスティグ・リンドベリやカイ・フランクが来日するなど盛んに交流が行われました。
日本と北欧デザインのつながりを感じさせるデザイナーの1人、
Jens H Quistgaard(イェンス・H・クイストゴー)
クイストゴーはDANSK(ダンスク)社の創設者であり
同社の琺瑯製キッチンウェア、Kobenstyle(コベンスタイル)のデザインで知られていますが、
その他にも、家庭用品を中心に2000以上ものプロダクトを残しました。
中でも1950年代から80年代に製造された
Relief(レリーフ)、Brun Azur(ブルンアズール)、Rune(ルネ)、Cordial(コーディアル)の4つのシリーズの食器は現在、ヴィンテージとして高い人気を得ています。
こちらはレリーフのカップ&ソーサー。
浮き彫りにされた木の葉の模様に釉がかけられ、美しい濃淡が現れています。
中央に緑釉が用いられたプレートは織部焼を連想させますね。
ブルンアズールのティーセット。モチーフは杏の花。Plum(プラム)とも呼ばれます。
これはシュガーポットなんですが、蓋物といった風情ですよね。
抹茶椀のようなフォルムをしているのはルネのシュガーポット。
コーディアルのティーセット。連続する波線のデザインですが、上下に出現するハートマークが可愛らしいですね。
遠目には青海波文にも千鳥小紋のようにも見えます。
こちらはシュガーポット。
籐が巻かれた真鍮の弦も和テイストを醸し出しています。
<同じ製品でも、異なる3つの刻印が>
これらのシリーズ、じつは3つの会社をまたがって作り続けられています。
1950年代、デンマークの窯業で盛んにM&Aが行われていたためです。
もともとは1937年創業のKronjyden(クロニーデン)社が製造していましたが、1953年、クロニーデン社をNissen(ニッセン)社が買収。
さらに1977年にはBing & Grondahl (ビング・オー・グレンダール)社が買収し、1988年に廃業しています。
このため同じ製品でありながら、3つの異なる刻印のものが存在するのです。
そして、さらに、レリーフのパイロット版のような製品が存在します。
それが、こちら。
Palshus(パルシュス)窯で焼かれたティーポット。
じつはクイストゴーはダンスク社を設立する以前の1948年から50年にかけて、パルシュス窯に在籍。
このティーポットは非常に短い期間だけ作られたレアなプロダクトなのです。
木の葉の模様と籐を巻いた真鍮の弦というレリーフの特徴が既に見てとれます。
そして面白いのは、この質感。まるで朱泥の急須みたいじゃないですか。
一瞬、常滑焼かなんかかと思ってしまいます^^;
日本と北欧の文化が影響しあって生まれ、デンマーク窯業のM&A時代の荒波を乗り越えて、今、日本のヴィンテージショップに並んでいる食器。
そんな背景を考えると、クイストゴーの作品たちが、ますます愛おしくなってきます。
●Jens H Quistgaard/イェンス・H・クイストゴー(1919ー2008)
王立アカデミー教授で彫刻家の父、Harald Quistgaard(ハラルド・クィストゴー)より幼い頃から芸術の手ほどきを受けて育つ。
青年期までに木工、彫塑、陶芸、大工、製図工など多くの技術を習得。
Georg Jensen(ジョージ ジェンセン)社で銀細工師として働いた後、渡米。
1954年にDANSK(ダンスク)社を設立。琺瑯製のキッチンウェア、Kobenstyle(コベンスタイル)が好評を博す。
生涯にテーブルウェアなど2000以上のプロダクトを残した。
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