トーベ・ヤンソン、ウェグナー、そしてもう1人の生誕100周年。Borge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)

公開日: : インテリア, 家具

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今年はトーベ・ヤンソンハンス・J・ウェグナーの生誕100周年。それに関する企画やイベントについて、このサイトでも紹介しました。
しかし、もう1人、忘れちゃいけない、今年、生誕100周年の人物が。
それはBorge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)。
モーエンセンはウェグナーとコペンハーゲン美術工芸学校家具課の同級生。ともにデンマーク近代家具デザインの父、Kaare Klint(コーア・クリント)に学び、そのリ・デザインの思想に影響を受けました。

モーエンセンが注目されたのは1947年のこと。
アメリカのシェーカー教徒が教会で使っていた素朴なイスをリ・デザインしたJ39シェーカーチェアによってでした。

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こちらがJ39シェーカーチェア。
モーエンセンは1942年からFDBモブラー(デンマーク協同組合連合会家具部門)のデザイナーを勤めていました。
シェーカーチェアが発表されたのは、戦後の物不足の時期。
FDBモブラーに課せられた使命は、一般市民のためにリーズナブルでクォリティの高いイスを作ること。
この課題をクリアするべく、モーエンセンは機械加工が簡単な部材を組み合わせてコストを抑えることにしました。
コストカットの努力はそれだけでなく、座面のペーパーコードは町の人に歩合を出して編んでもらったのだとか。
そんな苦労のかいもあり、低価格でシンプルなデザインのシェーカーチェアは大人気になりました。
モーエンセンはその後もFDBモブラーのデザイナーを長く勤め、庶民のための高品質なイスを数多くデザインしました。

 

ライバルであり親友だったモーエンセンとウェグナー

さてペーパーコードの座面と言えば、以前、紹介したウェグナーのチャイニーズチェアやYチェアが思い浮かびます。
モーエンセンがシェーカーチェアでデザイナーとして注目を浴び始めていた頃、
ウェグナーはまだ無名で、モーエンセンの仕事から多くの刺激を受けていたと言われています。
2人はライバルでありながら大親友。
ウェグナーのチャイニーズチェアは1945年、Yチェアは1949年の発表。
互いに影響を与え合っているのが分かります。
1962年にはウェグナーもシェーカー教徒のイスをリ・デザインしています。
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こちらがウェグナーによるCH36ダイニングチェア。
同じものをリ・デザインしたのですから当然ながら、J39シェーカーチェアとよく似ています。
仲良きことは良きことかな^^
性格的にはモーエンセンはいつも穏やかで冷静沈着、ウェグナーは情熱的と好対照だったらしいですが。

 

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そんな2人の恊働した作品がこちらのスポークバックソファ。
1945年のコペンハーゲン家具職人ギルド展示会に出品するためにデザインされたもので、
イギリスの伝統的な2人がけソファをリ・デザインしています。

 

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片側の袖は可動式になっていて革ひもで角度を調節。デイベッドとして使用できるユニークな構造。
当時、まだ31歳だったモーエンセンとウェグナーの若く大胆なセンスが感じられますね。
しかし、まだ無名だった2人の作品はお蔵入りになってしまいます。
製品化されたのは1963年のこと。そして現在も製造され続けています。

庶民のためのイスを多く残したモーエンセンですが、
一方の代表作には高級なものもあります。

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スペインの伝統的なイスをリ・デザインしたスパニッシュチェア。
モーエンセンはスペインが好きで、何度も家族で訪れています。
あるとき目にした貴族階級が使う一枚皮のイスにインスピレーションを受けたんですね。
とくに注目したのは幅広なアーム。
ここに飲み物をおいたり、ちょっとしたテーブルとして使えるようにしました。
皮の座面は下部でベルトで止められていて、使い込んで皮が伸びた時には締められるようになっています。
一枚皮の座面は、自動車の普及で仕事が少なくなっていた馬具職人の雇用確保の意味もあったそうで、モーエンセンの優しさを感じますね。

 

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スパニッシュチェアに座ってくつろぐモーエンセン。
このイスは自宅用にデザインしたもので、大のお気に入りでした。

 

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18世紀頃のイギリスの伝統的なイスをリ・デザインしたウィングバックチェア。
モーエンセンが最初にこのリ・デザインを手掛けたのは1939年。
以来、何度も修正を加えた作品を発表。1963年にようやく現在のウィングバックチェアが完成しました。

それにしてもモーエンセンとウェグナーの2人が同年に生まれ、
切磋琢磨しながら数多くの傑作を生み出せたことは、デンマークにとって、
というより、世界にとって大幸運だったと言えますね!

●Borge Mogensen/ボーエ・モーエンセン(1914ー1972)

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デンマーク、ユトランド半島のオルボー生まれ。
地元で1934年に家具マイスターとなった後、コペンハーゲン美術工芸学校家具課、王立芸術アカデミー家具科で家具デザインを学ぶ。
FDBモブラー(デンマーク協同組合連合会家具部門)のデザイナーとして、
一般市民の視点に寄り添ったリーズナブルで品質の良い家具を数多くデザイン。
ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセンと共に、デンマーク4大巨匠の1人とされる。

 

 

 

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