【不朽の名作北欧食器シリーズ】手描きの絵付けが素朴で力強い、arabia(アラビア)の名作Valencia(バレンシア)
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食器
arabia(アラビア)のValencia(バレンシア)は1960年に製造が始まり2003年まで販売されていた人気シリーズ。
デザインしたのは1948年から1968年に亡くなるまでアラビアの専属デザイナーだったUlla Procope(ウラ・プロコッペ)。
ウラ・プロコッペは悲しいことに40代で亡くなってしまうのですが、その短い生涯の間に非常に多くの名作を残しています。
アラビアではKaj Franck(カイ・フランク)に次ぐナンバー2と目されるほどの存在でした。
カイ・フランクがフォルムデザイン、ウラ・プロコッペがデコレートデザインという作品も数多くあります。
このバレンシアはフォルムデザインもデコレートデザインもウラ・プロコッペが担当しました。
その魅力はなんといっても職人さんの手描きによる力強い絵付け。
深みのあるコバルトブルーでほとんど隙間なく描き込まれた模様には大らかで素朴な優しさがあります。
大胆な筆遣いによって表れた濃淡が美しいですね。
手描きですから、全く同じものは2つとしてありません。
大らかで自由奔放な筆致に、どこか南国のムードが漂います。
バレンシアとは、その名の通りスペイン、バレンシア地方のこと。バレンシア地方は焼き物が盛んで、当地の陶器からヒントを得たデザインとされます。
北欧の人たちは暖かい南国への憧れがあり、スペインの太陽を思わせる力強いこのデザインはすっかり人気になりました。
傷や擦れさえ愛おしいオンリーワン
廃盤になった現在でも多くのコレクターがいるバレンシア。
とくに人気なのは初期に作られたものです。
1960年代の初めに、フィンランド国内向けに作られたものにのみ、こうして手描きのサインが入っています。
「UP」と書かれているのがウラ・プロコッペのイニシャル。そのあとのイニシャルは絵付師のもの。
半世紀も前に作られ、フィンランドの家庭で使われて来たのですから、物によっては表面に傷や擦れがあったり、本来の光沢が消えつつあることも。
そしてバレンシアは、貫入と呼ばれる釉薬の下に出来る細かいヒビが出来ることが多いのです。
でも、そんなダメージさえ愛おしく思えてしまうのがヴィンテージ品の魅力。
そのバレンシアがどんな人に使われてきたのか、一つひとつの傷からいろいろな想像をしてしまいます。
ダメージも、カップやソーサーの履歴を物語るオンリーワンの刻印ですよね^^
価格は初期のカップ&ソーサーで1万円程度といったところ。
なかなかのお値段ですが、バレンシアはもともとアラビアの中でも高級シリーズですし、ビンテージとしての価値を考えると決して高くはない気がします。
何十年も大切にされてきた器を我が家に迎え、今度は自分が大切に使って行きたいですね。
そして、次にこの器を手にするのがどんな人なのか、そんなことを考えながらのんびりフィーカを楽しむのも素敵じゃないでしょうか。
●Ulla Procope/ウラ・プロコッペ(1921-1968)
フィンランド生まれ。1948年から1968年までArabia の専属デザイナーとして活躍。
特に家庭用品シリーズでは、多数の有名デザイナーが在籍したAlabia の中でもカイ・フランクに次ぐ存在と言われるまでになる。
耐熱キッチンウェアの秀作Liekkiや、Meri、Ruskaなど、素朴で女性らしい実用的な作品の数々を生み出した。
しかし、47歳という若さで惜しまれながらその生涯を終える。
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